

Introduction
俳優・近藤笑菜 初監督作
—ドキュメンタリーとフィクションの境目で生まれた、はじめての映画。
『少女邂逅』(枝優花監督)、『Red』(三島有紀子監督)、『異動辞令は音楽隊!』(内田英治監督)など、インディーズから商業まで40本以上の映画に出演し、確かな存在感を示してきた俳優・近藤笑菜が、出産・子育てを経て、自身の生活と真正面から向き合い完成させた初監督作『あのとき』
監督自身が娘との日常を記録したドキュメンタリー映像と、
北海道・長沼町を中心とした雄大な自然の中で撮影されたフィクションの物語が交錯する、唯一無二のハーフドキュメンタリー作品。
俳優としてカメラの前に立ち続けてきた近藤笑菜が、「表現すること」と「母として生きること」の狭間で揺れながらも、自らメガホンを取り、“いま、この瞬間の感情” を掬い上げている。
撮影には、『もみの家』(坂本欣弘監督)『違う惑星の変な恋人』(木村聡志監督)の山田笑子。音楽は、話題作『恋愛裁判』(深田晃司監督)出演など、俳優としての活躍も目覚ましい小川未祐によるオリジナル楽曲。
ミニマルな制作体制ながら少数精鋭のスタッフが名を連ね、言葉にならない感情を、静かに、そして力強く作品に重ねていく。

Story
自然豊かな風景が広がる中、一人の女が、どこかを目指し一心不乱に歩いている。
ふと立ち止まり、目をつむると、娘との日々が鮮明に蘇ってくる――

Director's Message
この映画は、私自身が出産・子育てを経て抱いた、
日々置いていかれそうになる自分の心、過ぎてほしくないと感じる子どもとの時間を収めた短編です。
とてもパーソナルでささやかな映画ですが、沢山の方々にお力を貸していただき、完成させることができました。感無量と同時に、本当に感謝の気持ちでいっぱいです…
本作は、私の実の娘が出演していることもあり、配信などの予定はございません。
どうか上映の機会をお見逃しなく、スクリーンで見届けていただけましたら嬉しいです!
最後に、私がこの映画の制作費クラウドファンディングを実施させていただいた際に載せた、この映画作りにこめた源である想いを。こちらにも、綴らせていただきます。
私が娘を妊娠したとき、「こんなにもすべてが変化してしまうんだ」と驚きました。
今まで何気なくやっていたことが次々と出来なくなっていく日々に戸惑い、ホルモンバランスの乱れで情緒が不安定になり、「心も体も、まるで自分のものではないみたい」と不安な気持ちになったのを覚えています。
ただ、生まれてきた我が子はとてもとても可愛い。
娘と過ごす日々は本当にあっという間で、昨日張り切って何度も何度もやっていたことを今日は一度もやらなかったり、数日前にはできなかったことがいつの間にかできるようになっていたり。
できることが増えるのが嬉しくて楽しくてたまらない、どんどんアップデートされ成長していく娘の姿に、頼もしさと同時に寂しさを感じています。
そして新米母として、ネットやSNSに溢れかえる情報に翻弄されながら、右も左もわからず手探り状態で子供と必死に向き合う毎日。
もちろん我が子は可愛いけれど、親としての責任や業務に追われる日々に、どこか社会から取り残されているような、“自分”というアイデンティティが失われるような感覚に陥ることもありました。
この映画は、そんな私自身の経験と現在の日常を基に、ドキュメンタリーとフィクションを掛け合わせ創作致します。
本来は誰しも、”母”や”妻”などとラベリングをされることなく、ただ一人の人間として自由に生きることができる。
生きて、呼吸をして、地に足をつけて歩いている。ただ、それだけでいい。
―もう二度と戻らない、掛け替えのない娘との日々の記録―
―妊娠・出産・育児を経てなお、もがきながら生きている等身大の自分―
この映画とその制作過程を通じて、塞ぎ込む心が解放され、もう既に十分頑張っているあなたと私にパワーを与えることができたらいいなと思っています。
近藤笑菜